人事コンサルタントの『生きがい』づくり日記 人事コンサルティング会社 生きがいラボ

2017年3月30日

■「No Rating」が生まれた背景

いつもありがとうございます。生きがいラボの福留です。

前回から、米国企業で導入が広まっている「No Rating」について
お伝えしています。

今回は、No Ratingが生まれた背景について説明していきます。


米国企業が No Rating を採用する大きな理由は、

組織・個人のパフォーマンス(業績・成果)を高めるためには、
「内発的動機づけ」が必要不可欠になった

ということが挙げられます。


内発的動機づけについては、今まで何回もお伝えしていますが、

仕事が「楽しい」「おもしろい」「やりがいがある」というように
仕事をすること自体が目的になっている

という状態です。


このことを、フロー理論のミハイ・チクセントミハイ氏は
「自己目的的」と呼んでいますが、

何か別の目的(報酬)のために仕事をしている状態ではなく、
仕事そのものが(心の)報酬になっていることをいいます。

その逆が「外発的動機づけ」ですが、言葉の通り、
外からの刺激(アメとムチ)で人を動かそうということです。

従来型人事制度は、給与額やその根拠とされる評価点によって、
社員さんを組織の思う通りに動かそうという構造ですが、

それではパフォーマンスが高まらないことが明らかになり、
内発的動機づけを喚起するために No Rating が考えられました。


つまり、No Ratingは、今までの延長線上のコンセプトではなく、
従来型人事制度のまったく逆のコンセプトに基づいています。


さて次に、内発的動機づけが必要になった理由ですが、
創造性を発揮しなければならない仕事が増えた、ということです。

このことはずいぶん前から言われていたことですが、
成熟した経済のもとでは、成果をつくるには創意工夫が必要です。

創造性や主体性、情熱がなければ、
高いパフォーマンスを発揮し続けることが難しくなりました。

言い換えると、「仕事をやらされている」という意識では、
これからの社会では高い生産性は発揮できないのです。


しかし一方で、人事制度の構造に目をうつすと、
完全に外発的動機づけによって「働かせよう」という仕組みです。

もし、経営者側にそんな意図がなかったとしても、
構造からは「お金で釣ろう」というメッセージが読み取れます。


かなり以前から、脳科学や心理学の研究によって、
外発的動機づけが創造性や主体性を奪うことは言われていましたが、

ようやく No Rating によって、
それを人事制度に落とし込む動きが主流になってきたということです。


私は、この No Rating の広まりは、
人事制度が人間の本質に近づく第一歩になると考えています。

特に、これからの日本においては、内発的動機づけによる設計思想が
人事の主流になっていくべきだと考えています。

その大きな理由として、2つのことが挙げられると考えていますが、
それは次回にお伝えしたいと思います。


          生きがいラボ株式会社 代表取締役 福留 幸輔

2017年3月16日

■米国発「No Rating」とはどんな制度か?

いつもありがとうございます。生きがいラボの福留です。

今回から数回にわたって、
アメリカ企業において導入が広がっていることで話題になっている

「No Rating」の人事制度

について、情報提供と私の意見を発信していきたいと思います。


2016年の段階で、フォーチュン500の約20%にあたる企業において、
No Rating の考えによる人事制度が導入されています。

2017年には、50%になるという予測もあり、急速に広がっています。

聞き覚えのある企業では、
GEやGAP、マイクロソフト、アクセンチュアなどの企業が
No Ratingを採用しています。


No Ratingと言っても、各企業によって様々な取り組みがあるので、
「No Ratingとはこれだ!」と簡単には言えない部分もあるのですが、

今回は、No Rating の概要について説明していきたいと思います。


まず前提となる知識として、人事制度の基本構造は、

1.等級制度で、社員さんを格づけする
2.評価制度で、社員さんに点数をつける
3.給与制度で、点数に応じた給与額を決める

という3つの制度の連動によって成り立っています。


何で給与額を決めるか(=何で評価するか)によって、

□ 属人給 :年齢や家族構成などによって給与を決める
□ 職能給 :職務遂行能力によって給与を決める
□ 職務給 :担当する職務によって給与を決める
□ 役割給 :担当する役割によって給与を決める
□ 責任給 :担当する責任によって給与を決める
□ 成果給 :つくった成果によって給与を決める

などの呼び名が変わりますが、基本構造はすべて同じです。


従来型の人事制度とNo Ratingの違いは何かというと、
企業によって違いが色々とありますが一般的な特徴としては、

「評価制度でつけた点数によって給与額を決めない」

ということが挙げられます。


従来型の人事制度では、期末に上司が部下一人ひとりを評価して、
S~Dの5段階にランクづけを行い、
そのランクに応じて、賞与額や昇給額(減給額)を決定します。

No Rating とは、このランクを給与決定に使わないということです。


米国企業で起こっている取り組みとして、No Rating の他には、

□ No Curve :評価結果が正規分布になるような調整をしない
       (=S評価は全体の何%、という調整をしない)
□ No Calibration :評価結果の部門間での相対的な調整をしない

というものもあります。

一般的に「No Rating」という表現のなかには、
「No Curve」や「No Calibration」も含まれて使われています。


さて、No Ratingでは、給与決定に評価結果を使わないのですが、
そうすると疑問になるのは、

「どうやって給与額を決めるのか?」

ということだと思います。


これも各企業によっていろいろなやり方があるようですが、
多いケースは、

人件費予算を部門ごとに割り振り、
予算額内でマネジャーの裁量によって部下の給与額を決定する

というやり方です。


評価結果を給与決定に使わず、
マネジャーの裁量で給与を決定するので、次のことが不要になります。

□ 人事評価で、社員さんに点数をつける必要がなくなる
□ 期末評価も必要なくなり、目標も年次で設定する必要もなくなる


また、次のような必要性が生じます。

□ マネジャーが部下の仕事を今まで以上に理解する必要が生じる


ですので、「タッチポイント」や「タッチベース」などのように
企業によって呼び名は違いますが、

マネジャーと部下が今まで以上にコミュニケーションをとるような
仕組みを導入して、

目標設定や目標修正、結果へのフィードバックをリアルタイムで
行うようにしています。

そのことによって、マネジャーが部下の成長を密接にサポートし、
心理的に安心して仕事ができる環境を整えようということです。


加えて、給与額への納得性を高めようというねらいもあります。

半年(あるいは1年)に一度、評価のフィードバックを受けるより
リアルタイムでフィードバックを受けていた方が、

部下が給与額を見たときに驚くようなことをなくし、
「なるほど」「予想した通り」と納得性が高まるというねらいです。


ここまでが、No Rating の概要です。主な特徴をまとめると、

□ 年次評価において、点数づけ・ランクづけを行わない
□ マネジャーと部下がリアルタイムでコミュニケーションを行う
□ マネジャーの裁量で給与額を決定する

ということになります。


次回は、No Ratingがアメリカ企業で広まってきた背景について
説明していきたいと思います。

         生きがいラボ株式会社 代表取締役 福留 幸輔

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